鉱石ラジオは、電波の知識がなくても簡単に作れます。また、ラジオを作ると電波のもつ不思議な性質がわかります。つくり方をお手伝いします。

 ラジオ放送の電波を鉱石(ゲルマニュウムダイオード)ラジオ受信機で受信するまでの仕組みは、次の図のようになっています。鉱石(ゲルマニュウムダイオード)ラジオを作ることによってこの働きを確かめることができます。


鉱石ラジオは、図のように簡単なものです
  ・アンテナ線 ・コイル ・可変コンデンサ(バリコン)
  ・鉱石(又はゲルマニュウムダイオード)検波器 ・抵抗器 ・コンデンサ
  ・クリスタル(又はセラミック)イヤホン ・ラグ板  
  なお、これらの部品の働きは、あとで説明されています。



鉱石ラジオの回路図

 


円筒コイルを使用するゲルマニウムラジオの部品


工作してみよう
  (1)  コイルを巻く
 

 円筒を使ってコイルを巻く場合、巻き幅(L)は、約7cm必要です。全体で10cmの円筒を用意します。コイルの巻き方は、巻き始めに下から1.5cmとし、その場所に小さな穴を0.5cmほど離して2つ開けて図のように固定してから始めます。
 巻き終わりも同じようにして巻き線が戻らないようにします。
 必要な回数を密着して巻いて出来上がりです。


  コイルを巻く筒(ボビン)に、トイレットペーパーの芯を使用する場合の例

D=40mm
コイルの銅線は、0.56mmのエナメル銅線を使用します。
コイルの巻数110回 幅 L=約70mm

コイルの巻き始めと巻き終わりは、ボビンに2つの穴を開け、この穴を通して銅線の端を取り出す。


(2)ラジオを組み立てる
 

 ラジオの台は、ラグ板を利用します。
 部品を下図のように半田付けをします。


ラグ板は、部品を中継接続するための役割をするもので、
平面ラグと立体のラグがあります。



(3)  半田付けが終われば、アンテナとアースをつける。
(4)  作業が終われば、イヤホンを耳に差し込み、バリコンを回して受信した電波が聞えることを確認します。
(5)  聞えない場合、配線を確認する。ラジオの電波が弱いところでは、受信できないことがあります。

 

ラグ板に組んだラジオ 木箱に納めたラジオの例



【参 考】
1 鉱石(ゲルマニュウム)ラジオ作成に必要な部品と工具
(1) 銅線:0.56mm約12m
(2) バリコン350pF(コンデンサの容量を指で回して変えることができるもの)
(3) 鉱石又はゲルマニュウムダイオード検波器(電波を検波して音声を取り出す)
(4) コンデンサ:1000pF
(5) 抵抗器:100kΩ
(6) クリスタル(又はセラミック)イヤホン
(7) 平ラグ板
(8) アンテナ用電線
(9) コイルのボビン:トイレットペーパーの芯(直径約4cm)
(10) 工具
  @ 半田ごて(30W)と半田
  A ラジオペンチ
  B ニッパ
  C ドライバ
  D ピンセット


2 鉱石ラジオの回路構成と回路の働き
(1) アンテナ
空間を伝わる電波をひろいあげる役目をします。屋外に長い導線を張ると導線の長さに比例した高周波電圧が発生します。この高周波電圧をラジオに取り込むのがアンテナの働きです。
(2) 同調回路
コイルとバリコンを使って受けたい電波を選ぶ回路です。同調回路の同調周波数を希望する放送局の電波の周波数に一致させると他の電波は同調回路の中を流れてしまい、出力されません。その結果希望局の電波だけが選択されて出力されます。このように共振現象を利用して希望するラジオ放送局の周波数を選定する働きをします。
  → 同調周波数の詳しい説明はこちらをクリック
(3) 検波回路
同調回路を通った高周波電流の一方向の電流だけを通し、反対方向の電流を通さない鉱石の特性を利用して音声成分を取り出す働きをします。
(4) 音声電流を音声にかえる回路です。


3 ラジオを作りながら学習館の電気回路の3つの要素(部品)について復習しましょう。

(1) 抵抗
   電気の通し難さを抵抗といいます。単位はオーム(Ω)で表します。その千倍がキロオーム(kΩ)です。
(2) コイル
   銅線をループ状に巻いたものがコイルです。コイルに電流が流れると電磁誘導により起電力が発生します。コイルは、直流の電流は通しますが、交流の電流は周波数が高いほど流れにくくなります。コイルのこの働きを誘導(インダクタンス)ともいい、単位をヘンリー(記号H)で表します。その千分の1がミリヘンリー(mH)で、百万分の1がマイクロヘンリー(μH)です。ωは角周波数といい、周波数の約6.28倍です。
(3) コンデンサ
   二枚の導体の間に絶縁体を挟んだものを蓄電器またはコンデンサといいます。コンデンサに電池を接続すると+と−の電荷が貯まります。この電荷の貯める能力を静電容量(キャパシタンス)Cといい、単位はファラッド(記号はF)で表します。
 マイクロファラッドは、その百万分の1で、ピコファラッド(pF)は、マイクロファラッドの百万分の1です。
 コンデンサに交流の電圧Vを加えると電流Iは、I=ωCVとなります。周波数が高いほど電流は大きくなります。
(4) 同調
 

 同調回路は、コイルLとコンデンサCを並列に接続し、並列共振を利用して目的の電流を選ぶ回路です。
 同調周波数fは、次式によりLとCの値できまります。

 共振現象は、インダクタンスLの示すリアクタンス(電流の流れにくさ)ωLと、Cのリアクタンス1/ωCが等しくなり、打ち消されゼロとなり、共振回路のコイルのごく小さい抵抗のみとなるため、共振回路の電流は最大になる現象が起ります。この現象を利用して放送局の電波を選ぶことができるのです。