電波を送受信することにより、対象物体の位置の決定を行なうか又は位置に関する情報を取得するシステムです。レーダが代表的なシステムです。
 送信と受信を同一地点で行なう場合をモノスタティックレーダ、離れた地点で行なう場合をバイスタティックレーダといいます。

略 史

大正14年(1925) CWレーダによりAppletonが電離層を発見
昭和元年(1926) パルスレーダによりBreit and Tuveが電離層を測定
昭和26年(1951) 戦後初の国産気象レーダ(手動回転式)を製造
昭和28年(1953) 国産舶用レーダ製造
昭和39年(1964) 富士山頂気象レーダ設置
昭和39年(1964) 大阪に港湾レーダ(ミリ波)設置

(1) 送信信号の変調方式と測定原理

  ○ パルスレーダ(Pulse Modulated Radar)
   

 パルスで変調した電波を送信するレーダであって、パルスが送信されてから受信されるまでの時間からタ−ゲットまでの距離を求めることが出来ます。
 電波の速度c、送信から受信までに要する時間Δtとすると、ターゲットまでの距離Rは、送信波と反射波の時間差Δtから R=cΔt/2となります。


  ○ CWレーダ(Continuous Wave Radar)

 連続波(CW)を送信して観測するレーダであって、反射波の位相の遅れからターゲットまでの距離を知ることが出来ます。


  ○ FM/CWレーダ(Frequency Modulated CW Radar)

 CW信号の周波数を周期的に変化させて送信するレ−ダであって、反射波が受信される時刻には送信波の周波数が変化しているので、両者の差周波数を測定することにより、反射波の時間の遅れを測定することができ、ターゲットまでの距離を知ることができます。
 受信したときの差周波数が小鳥のさえずりのように聞こえることから、チャープ(chirp)レーダとも言います。狭帯域伝送を行うので、小電力でもS/Nの良い信号が受信できます。


(2)  レーダ用の周波数

 船舶用:3GHz帯、5GHz帯、9GHz帯
 航空用:5GHz帯、9GHz帯


(3) レーダの用途

  ○ ドップラ・レーダ(Doppler Radar)

 電波を移動する物体に向けて発射すると、その反射波は物体の移動速度に比例した周波数偏移(元の周波数からのずれ)を受けて戻ってきます。これをドップラ偏移といいます。
 ドップラ・レーダは通常のレーダにドップラ偏移測定機能を付加したレーダで、雨域の移動情報を得ることができる気象用ドップラ・レーダ、海面に向けて電波を発射して波浪情報を得る海洋波浪レーダや、航空機に搭載して対地速度を求めるドップラ・レーダなどがあります。
 また身近なドップラ・レーダの一種に、Xバンド(10GHz帯)の電波を用いて、車両やボールなど、ある程度高速で移動する物体の速度を測定・表示するスピードガンがあります。
 ドップラ効果は、1842年にオーストリアのドップラにより発見されたもので、周波数偏移量をΔf(Hz)、物体の速度をV(m/s)、光速をc(3×108m/s)とすると、

       Δf=f×V/(3×108) 

 となります。
 ただし、物体の移動方向が観測者に対して角度θをなす場合は、周波数偏移量はΔf×cosθとなります。



 ○ 気象レーダ

気象レーダのアンテナ鉄塔 レドーム内のアンテナの例

[降雨の状況を表示するレーダの画面の一例 ]


  ○ 空港気象ドップラ・レーダ
   
気象の変化を空港監視レーダで観測  

     空港気象ドップラ・レーダは、空港を中心とする半径120km以内の降水域を観測します。
 空中線(アンテナ)から電波を発射し、雨粒などから反射して戻ってくる電波を観測して降水領域の強さ、方向、距離を測定します。
 また、戻ってくる電波の周波数の変化(ドップラ効果を利用)から雨粒の移動速度、つまり風速を計算します。
 航空機の運航に大きな影響を与える恐れのある「低層ウィンドシヤー」と呼ばれる、高度およそ500m以下の風向風速の急激な変化の検出も行います。


  ○ 雷観測レーダ

 雷雲の検出および雷雲の発生、発達過程の観測を主目的とするレーダとその情報処理装置で構成されるシステムです。
 
 目標(雷雲)からの反射信号の強度やドップラ速度を測定し、その分析結果から雷雲の存在を推定します。


雲観測レーダの画像
雷観測レーダのアンテナ


  ○ バイスタティック・レーダ
 ドップラ・レーダには、主レーダと離れた地点にバイスタティック受信機を配置して雨量観測を行うレーダを、送受信を同一地点で行うモノスタティックレーダに対しバイスタティックレーダといいます。
 バイスタティックレーダの原理は図のとおりです。
 主レーダから発射された電波が降水粒子に当たり散乱した電波を観測し、同じ散乱電波をバイスタティック受信機で受信して、両出力データを処理することにより、短時間に広範囲の正確な3次元風速分布の観測が可能になります。


  ○ 短波海洋レーダ

 2局を1組としてお互に離れた海岸に設置し、同一海域に向けて電波を送信することで、約40km四方にわたる海域内の海流の流向、流速、波高及び海上風向の2次元分布を観測します。



  ○ パルスレーダ

 パルスレーダは、障害物の検知するため、船舶レーダ、航空レーダ等に使用されています。  
 船舶レーダは、アンテナを360度回転させ船舶の周囲の物体を確認し、航行の安全のために利用します。
 周波数は、3GHz帯、5GHz帯、9GHz帯の電波が使用されています。


船舶に設置されたパルスレーダ用アンテナの例
周波数:9GHz帯
空中線電力:10kW
測定範囲:0.25〜60マイル
    (約0.45〜108km)



  ○ 合成開口レーダ(SAR:Synthetic Aperture Radar)

 飛行中の航空機又軌道上の人工衛星などに搭載したレーダから地上の対象物又は対象地域に向けて、進行方向と直角方向にビームを走査しながらパルス電波を発射して観測します。
 地表からの反射波を進行方向に沿って合成することにより、対象の2次元画像を高い分解能で得ることができます。
 この方式の合成開口レーダに対して、通常のレーダを実開口レーダと言います。


合成開口レーダの測定原理図

合成開口レーダーは、地球上の植生分布、土地利用情報、雪氷情報、鉱物・水資源情報、海面温度や赤潮情報、海面汚染状況などの把握、さらに火山活動の監視や穀物生産予測などに広く利用されています。



【参考】
 SARによる地球観測の例を下図に掲げました。