電波エネルギーの利用方法には、誘電加熱と誘導加熱があります。
 電波は電界と磁界の形でエネルギーが伝わっていく波なので、その電気的エネルギーを利用する加熱法を誘電加熱といい、磁気的エネルギーを利用する加熱法を誘導加熱といいます。

 マイクロ波(日本では2450MHz、米国では915MHz)の電界を誘電体に印加して、誘電体の中の分子を振動させると分子相互の摩擦熱によって誘電体は発熱します。この原理を応用したのが電子レンジです。産業用としては、ビニールやプラスチック加工や、木材乾燥などに使われています。

 一方、数十キロヘルツ以上の電波を磁性体に印加すると、磁界による渦電流が磁性体に誘起され、磁性体を加熱します。これを応用したのが、電磁調理器です。産業用として、金属の溶解、焼き入れ、焼きなまし等に、誘導式の溶解炉が使われています。最近はトランジスタやLSIの素材である半導体を溶かして単結晶を作るのに活躍しています。

(1) 誘電加熱器の展示コーナ

  ○ 電子レンジ
     食品にマイクロ波(2450MHz帯、約500W以上)を照射し、食品の水分子を揺り動かし、分子同士による摩擦熱により食品を加熱する調理用機器です。
   
    [ 参考 : マグネトロンの構造 ]
 マイクロ波を発生させるマグネトンの構造は、金属製の円筒中央の陰極から電子を放射します。電子は、上下方向の強い磁界により、進路がまげられて、磁力線の回りを回転しながら陽極へと向います。電子が陽極の空洞に入ると共振して強い振動電流を起こします。それを導波管から大出力のマイクロ波として取り出すのです。
 マグネトロンから発生したマイクロ波は、レンジ内の回転羽根で攪拌されて、食品全体にまんべんなくゆきわたります。
 マイクロ波が金属類に当たると電流が流れますが、もしもその金属の長さが半波長になると共振現象を起こして大きな電流が流れるので大変危険です。電子レンジ内には絶対に金属類を入れないように注意する必要があります。


  ○ ウエルダ
     高周波誘電加熱法を用いた溶着方法です。 高周波誘電加熱法は、数10MHzの電波エネルギーの電界作用によって、誘電体を加熱します。
 従来の手動ダイヤルによる電流の制御に代わって、最近はデジタル制御システムが開発され、自動同調システムにより任意に設定した電流値とその上昇スピードをコントロールすることにより、安定した溶着が可能になっています。


(2) 誘導加熱器の展示コーナ

 誘導加熱の原理は、ファラデーの電磁誘導作用によるもので、交流磁界中に導体を置いたとき、それは渦電流により発熱(ジュール熱)します。それを利用する方式を誘導加熱といい、実用例として調理用機器があります。

  ○ 電磁調理器の原理(IH:Induction Heater)
   

 コイルにインバータで発生した20から60kHzの電流をコイルに流すと高周波交流磁界が発生します。この磁界を構成する磁力線が調理器のプレート上に置かれたなべ底を通過するときに渦電流を生じます。その電流となべ底の電気抵抗によりジュール熱が発生します。

 なべ底に流れる渦電流は、抵抗が少なければジュール熱を十分に得ることができないため、抵抗の少ないアルミニュームや銅製のなべは調理に利用できませんでした。
 しかし、最近の調理器は、加熱コイルへの電流の周波数を従来のものより3倍高くし、その上加熱コイルの損失を抑える開発を行ったため、磁力線が増加してアルミニュームや銅などの非磁性体金属でも利用可能になりました。



  ○ ハイパーサミア
   

 生体が電磁エネルギーを吸収することによって生じる発熱を利用して、患部を局所的に温め疾病の治療を行なう方法です。
 主としてISM(Industrial Scientific and Medical:産業・科学・医療用)帯のマイクロ波が使われます。


医療利用の一例