ラジオNIKKEI(日経ラジオ社)は、日本短波放送(NSB:NIHON SHORT-WAVE BROADCASTING)として昭和29(1954)年8月27日発足した、日本で初めての、また唯一の国内向け短波放送です。
 呼び出し名称(コールサイン)はJOZで、放送周波数と空中線電力は下表の通りです。

  周波数 (MHz) 空中線電力
第1放送 3.925、 6.055、 9.595 50kW
第2放送 3.945、 6.115、 9.760 50kW(3.945のみ10kW)

注) 東京送信局は、千葉県長生郡長柄町にあり、上記の全周波数を無指向性アンテナにより送信。また根室送信局は、北海道根室市にあり、周波数3.925MHz(出力10kW)、指向性アンテナにより真北から215度方向に実効放射電力は28kWで送信。

 昭和53(1978)年に愛称を「ラジオたんぱ」に変更、平成16(2004)年には「ラジオNIKKEI」に変更して現在に至っています。


開局時(1954年)のベリカード

東京オリンピック時(1964年)のベリカード


 日本短波放送(NSB)を受信するには、短波を聴くことができる受信機が必要でした。
 しかし、当時はそのような受信機は少なかったので、普通のスーパーヘテロダイン式中波ラジオを利用して、NSBを受信できるようにする「NSBチューナー」という、外付け同調回路が開発されました。
 「NSBチューナー」は、コイル二つと切り替えスイッチなどが組み込まれたもので、それを中波ラジオのコイルに取り付けることにより、3.5MHz〜10MHzの受信を可能にしています。
 また、切り替えスイッチで中波でも短波でも聞くことができるようになっています。

 その後、一定の周波数を発振する「NSBクリスタル」の開発により、短波受信機の同調の難しさと、一度調整したものが時間が経つと同調がずれて聞こえなくなるという不便さが解消されました。
 このクリスタル(水晶発振子)を受信機に入れてダイヤルを廻すと、NSBの周波数の位置ではクリスタルが発振して受信できるが、他の位置ではクリスタルは発振しないので、普通の受信機と同様に他の局の電波が受信できるのです。
 当時の「NSBクリスタル」には、次のような説明が書かれています。(原文のまま)

「ソニークリスタル説明書」
CSR−1H型(第一プロ用クリスタル3.925MHz 6.055MHz 9.595MHz)
CSR−2H型(第二プロ用クリスタル3.945MHz 6.115MHz 9.760MHz)
 日本短波放送(NSB)を受信するとき、このクリスタルを使用すると、中波放送と同じように容易に受信できます。
 クリスタルは精密な構造になっています。 床などに落とすと動作しなくなることがありますので、取扱いにご注意ください。


「NSBチューナー」の外観
「NSBチューナー」の内部 「NSBチューナー」の中波ラジオへの接続図


NSBクリスタルの例



(ループアンテナ付きのラジオ)

(カセットテープレコーダー付きのラジオ)

短波放送を聴くことができるラジオの例


NSB受信専用 短波ラジオの例




短波放送を受信する楽しみ

 中波放送は地表波(地表に沿って伝わる電波(学習館参照))の届く地域をサービスエリアとしています。また超短波(VHF)を用いるFM放送は地上波(直接届く電波(学習館参照))の届く可視域内をサービスエリアとしています。 
 これに対して短波放送は、空間波(電離層反射波)の届く範囲内すべてを対象としているので、国内向け放送の場合は日本全国が、また国際放送の場合は全世界がサービスエリアとなります。
 電波の伝わり方は、電離層の変化により時々刻々変わるので、通常、放送局側は同じ番組を異なる周波数にのせて放送しています。受信者側は、電離層(D層といわれる高度の低い層)による吸収の多い昼間は高い周波数を選び、また電離層(F層といわれる高度の高い層)が弱くなって、電波がそれを突き抜けるかもしれない夜間(D層も消滅して吸収が少なくなる)には、低い周波数を選んで受信するのが賢い受信法です。
 季節や時刻に応じて、受信局や受信時間帯、また周波数を選びながら放送を聴くというのが、受信者の楽しみの一つです。

ベリカード・コレクション

 このように放送受信を楽しむ人(BCL: Broadcasting Listener)や、特に短波放送を楽しむ人(SWL: Short Wave Listener)にとって、もう一つの楽しみ方はベリカード(Verification Card)を集めることです。これはコレクタにとってだけでなく、放送する側にとっても重要な意味を持っています。
 特に電離層伝搬にたよる短波の場合、どの時間帯に、どこまで電波が届いているか、また電波の質が良いかなどは、なかなか把握できません。それだけに受信状況を記録した受信報告を受信者から送ってもらうことは、放送を運営する上で欠かせない情報なのです。
 ベリカードとは、放送を受信した時、受信日時、受信内容などを記入した受信報告書(Reception Report)を放送局に送ると、その証明として放送局が返送するカードをいいます。


開局20周年時(1974年)

「ラジオたんぱ」誕生時(1978年)
   

開局30周年時(1984年)

開局35周年時(1989年)
   

開局40周年時(1994年)

ラジオNIKKEI誕生=50周年時(2004年)