海上の航行援助

 海上保安庁は、船舶の航行安全のため、@中波無線標識、Aマイクロ波無線標識、BロランC、CディファレンシャルGPS を整備し運営しています。
 なお、平成13年(2001年)まではデッカシステムも運営していました。


@ 中波無線標識
 中波無線標識は、中波帯の周波数を用いた中・近距離用の電波標識で、無線標識局から全方向に均一な電波を発射しています。船舶は方向探知機を用いてこの電波を受信し、電波の到来方向(無線標識局の方向)を知ることができます。
 海上の無線標識局には、285kHz〜325kHz(長/中波帯)の周波数が使用されており、有効範囲は200kmです。
 無線標識局から発射された電波は、全方向に飛んで行くので、船の方向探知機で方位を測ると、その電波がどの方向から飛んできたのかが分かります。
 船が、近くのもう一つの無線標識局から発射されている電波を同じようにして測ると、船の位置はこの二つの線の交わったところにあることが分かります。
 現在、船の位置を測定する方法として、主としてGPSが使用されていますが、この測定誤差を小さくする方法としてCのディファレンシャルGPSがあります。
 海上保安庁では、計算した誤差分を補正情報として中波無線標識局27局の電波により通報しています。
 
 無線標識局のアンテナを下の写真に示します。
   

中波無線標識局(犬吠埼)のアンテナ(左は灯台)

中波無線標識局(剱埼)のアンテナ


A マイクロ波無線標識(昭和44年運用開始)
 標識局から発射されている船舶のレーダと同じ周波数の電波をレーダで受信すると、船舶のレーダ画面上に、船舶と標識局を結ぶ方向に線や点が現れます。それから発射局の位置がわかります。周波数は、9375〜9435MHzを使用しています。測定距離は約40kmです。

レーダビーコン
来 島 梶 取 鼻 くるしまかじとりのはな ・ 愛媛県)
レーマークビーコン
(塩屋崎・福島県)




B ロランC

 ロラン(LORAN)とは、Long Range Navigation(長距離電波航法)の頭文字によって表現した呼称です。船舶がロラン受信機によって船位を測定するための電波を発射する無線局です。平成5年米国コーストガード(沿岸警備局)から海上保安庁に移管され運用されています。
 ロランCは100kHzの周波数を使用した双曲線航法です。有効距離は、4,000km、測位精度は、500m〜5km程度といわれています。

(注) 双曲線航法とは、「2つの送信局からの信号の到達時間差が一定の値となる点の軌跡は、その送信局を焦点とする双曲線となる」という原理を応用した電波航法です。

ロランC受信機の例

双曲線航法の原理図

ロランCのアンテナ

ロランCの配置図(海上保安庁のホームページから)
   
 日本のロランCは、4局[新島、慶佐次(沖縄)、南鳥島、十勝太(北海道)]で構成されています。


C ディファレンシャルGPS(Differential Global Positioning System)

 GPSは、米国が運用する衛星測位システムです。軍用として開発されたシステムですが、標準測位サービスが民間利用にも開放され、海上でも利用されています。
 GPSユーザ受信機は、GPS衛星からの電波を受信して、受信機と複数のGPS衛星との間の距離を測定し、そのデータを基に自分の位置を計算します。

 GPSを使用した測位は、電波通路上にある電離層中の電子や大気中の水蒸気の影響を受けて、常に100m程度の測位誤差があります。この誤差を小さくする方法としてディファレンシャルGPSがあります。
 この方法は、あらかじめ位置が正確にわかっている場所(基準点)でGPS測位を行い、基準点に対する測位結果のずれ(誤差)を計算します。その誤差分を中波無線標識局の電波で通報し、利用者がそれを受信することによりGPSによる測位誤差を10m以下にすることができます。

 

 海上保安庁は、一部の離島を除いた日本沿岸全域でDGPSサービスを提供しています。
 GPSセンター局から全国27か所に配置されたDGPS局に位置の補正情報を伝送し、船舶局は、付近のDGPS局からの電波により、船位を補正することができます。


D 航路標識監視システム
 船舶が狭い水路を通過しなくてはならない場合、船舶の安全航行のためブイ(浮標:赤色または青色)と指向灯が設置され利用されています。
 これらのブイが正常に作動していることを監視するために、電波を利用しています。
湾内に設置された赤いブイと青いブイ