携帯無線電話は、日本では昭和54年に当時の日本電信電話公社(現日本電信電話株式会社)が開始した自動車無線電話サービスに端を発しています。
 このシステムは、多数の基地局の無線ゾーンを蜂の巣の様に切れ目なくつなぎ合わせたサービスエリアを面的に構築し、この無線ゾーン内の移動体は、近くの基地局を介して公衆通信回線網内の加入電話、あるいは、他の移動体と接続して通信を行う仕組みになっています。
 サービス開始当初の一つの基地局の無線ゾーンは、自動車が対象の通信であったため、直径約5〜10kmの中ゾーンでした。しかし、その後技術の進歩により移動機は人間が携帯できるよう小型化、小電力化が図られた結果、無線ゾーンは約500m〜1kmと小さくなり、現在のような携帯無線電話へと発展してきました。更に、需要に応じて無線ゾーンは、益々小さくなりマイクロセル、ピコセルへと発展しています。

 

略 史

昭和54年12月
(1979)
日本電信電話公社(後のNTT)東京23区で自動車電話サービス開始
NTT方式(800MHz帯 25kHzアナログ方式)
昭和60年 4月
(1985)
電気通信自由化。NTT民営化及び電気通信事業者の新規参入可能となる。
昭和63年 5月
(1988)
    12月
東京23区でNTT大容量方式の秘話サービス開始(狭帯域化)
 
日本移動通信(株)IDO(現KDDI)、東京23区でサービス開始
平成元年 7月
(1989)
     9月
関西セルラー電話(株)(現KDDI)、サービス開始(800MHz帯 25kHz北米方式) 

IDOが超小型携帯電話「ミニモ」を提供
平成 5年 2月
(1993)
NTT DoCoMoが800MHz帯デジタル(PDC)方式の携帯・自動車電話サービス開始
平成 6年 4月
(1994)


    12月
携帯無線電話端末売切り制導入
NTT DoCoMo、(株)東京デジタルホン、(株)ツーカーホン関西が1.5GHz帯デジタル携帯・自動車電話サービス開始

IDO(現KDDI)とセルラー各社でローミング・サービス開始
平成 7年 4月
(1995)
関西セルラー電話(株)が800MHz帯デジタル携帯・自動車電話サービス開始
平成 8年 1月
(1996)
(株)デジタルツーカー九州がサービス開始
平成10年 2月
(1998)
セルラー各社(現KDDI)がCDMAサービス開始
NTT DoCoMoインターネット接続サービス開始
平成13年10月
(2001)
第3世代携帯電話導入
W-CDMA、DS-CDMAの2方式、周波数は800MHz帯、2000MHz帯

 

(1)携帯無線電話システム回線構成図

 携帯電話のシステムは、図のようにセルといわれる無線ゾーンを多数結合し、全体のサービスエリアを構成しています。
 携帯電話、あるいは、加入電話からの通話は、交換局を介して接続して行われます。

携帯電話システムの構成概要

 

(2)基地局設備の例

 
AUの基地局アンテナ
(KDDI提供)
 
NTTドコモの
基地局アンテナ


(3) 移動端末器

  ア 第1世代自動車・携帯無線電話の移動機

   @ アナログ方式導入当初の移動機

 
1979年
1982年
1988年


自動車電話導入時の移動機大きさ等
  1979年 6,000ml、7kg
  1982年 1,500ml、2.4kg
  1988年  500ml
使用周波数帯 :925〜940MHz(移動)
        870〜885MHz(基地)
 チャネル数 :600
 チャネル間隔:25kHz
 空中線電力 :1W/5W
        (移動機の受信入力の強さにより
         発射電力を切り替える)


A 携帯型移動機(ショルダフォン)

 
1986年
1988年
 
 
ショルダフォンの運用
携帯が可能になったショルダフォン
 大きさ  : 500ml    
 空中線電力: 1W
   


   B ハンディタイプの移動機

1987年
1989年
携帯型移動機の諸元
 大きさ   :150ml
 方式名称  :NTT大容量方式
 周波数帯  :925〜940MHz(移動)
        870〜885MHz(基地)
 チャネル数 :2,400
 チャネル間隔:6.25kHz(インタリーブ)
 空中線電力 :1W

 

   C 平成3年頃の携帯電話の端末

メーカ各社が開発した移動端末機種


イ 第2世代超小型携帯機

 平成5年に第二世代のデジタル通信方式(PDC:Personal Digital Cellular)が導入されました。
 PDCの通信方式の諸元は、次の通りです。

 使用周波数帯 :800MHz帯、1.5GHz帯
 アクセス方式 :TDMA/FDD
 チャネル間隔 :50kHz(25kHzインタリーブ) 
 通信速度   :9600bps
 移動機の大きさ:1,000ml

  ○ 携帯電話の進化
     平成5年に導入されたデジタル通信方式の携帯電話は、平成7年にNTTドコモがデジタル方式の特徴を活かした[iモード]サービスを実施したのを皮切りに、EZ、写メール等、携帯電話からインターネットに接続してWebサイトが見られるサービスや、電子メールを送受信するといった携帯電話のインターネット端末が急激に進化しました。
デジタル方式初期の機種


ウ 第3世代デジタル方式携帯電話

 平成13年に導入された第3世代の携帯電話方式は、ITU(国際電気通信連合)が作成した国際標準規格であるW-CDMAとDS-CDMAの2システムでサービスが開始されました。
 第3世代の携帯電話の特徴は、伝送速度最大384kbpsのパケットサービスの他、インターネットから音楽、動画配信サービスを受けうことができる等、更に機能の進化を続けています。
 第3世代の携帯電話の諸元は、次の様になっています。

  使用周波数帯は、800MHz帯、2GHz帯
チャネル間隔:
  100kHz又は200kHz(DC−CDSMA)、
  50kHz(MC−CDMA)
空中線電力 :0.25W以下
第3世代の携帯電話


エ 移動機の容量の変化

 移動機の容量は、技術の進歩に伴って小さくなっています。その推移を次のグラフに示しました。

 
 

日本における、携帯電話・PHSの普及率
(総務省資料より作成)