昆虫にとって触角は、食物のありかや敵の存在を知るためになくてはならないものです。触角を英語でアンテナ(antenna)といいますが、その言葉を借用して、電波を発射したり、受信するために必要な導線をアンテナと呼ぶようになりました。しかし無線電信が発明された約百年前はアンテナではなく空中線(aerial、エアリアル)という言葉が使われていました。確かにマルコーニが凧や気球を使って空中高く導線を伸ばし、次々と通信距離の記録を更新していた頃は、空中線の言葉はぴったりでした。その後長波時代に入ると、百メートル近い鉄塔群と、それらの間に展張された無数の電線で構成された大空中線は、無線通信という先端技術のシンボルでした。また短波時代になっても、カーテン型空中線とか菱形空中線という、指向性空中線が空高くそびえていました。かすみ網ならぬ空中線網に引っかかって命を落とした鳥は相当いたはずです。

  等方性
アンテナ:

 全方向に均一に電力を放射する、損失のない仮想上のアンテナです。実際に作ることはできませんが、基準のアンテナの一つとして非常に有用です。

  【アンテナのいろいろ】
 


  共振型の
アンテナ:
 電波の波長の整数倍(または整数分の一)の長さをもつもので、共振により大きな電流の流れるものを共振型のアンテナといいます。半波長ダイポールは典型的な共振型のアンテナです。導線上に定在波が乗らないよう終端に特性インピーダンスを接続した、進行波型のアンテナは非共振型のアンテナです。


  アンテナの
指向性・利得:
 電波をどれほど集中的に放射、または受信するかを示す度合いを指向性といい、それを数値的に表わしたものを利得といいます。絶対利得は、等方性アンテナを基準にしたとき、目的方向にどれほど能率よく電波を集められるかを表す量をいいます。半波長ダイポールまたはホーンアンテナなど、等方性アンテナ以外のアンテナを基準にした時の利得を相対利得といいます。


  線状アンテナと
面状アンテナ:
 ダイポールアンテナや八木アンテナのように、導線に電流を流してアンテナを形成するものを線状アンテナ、ループアンテナ(ループ面を通過する磁束に感ずるアンテナ)やホーンアンテナのように面から電波を放射または受信するものを面状アンテナといいます。